ラッコ、苦境を逃れる2005年10月06日 10:12

という表題の本日付 San Jose Mercury News 1A面。原題は

OTTERS LET OFF THE HOOK

カリフォルニアでは、サンフランシスコの南からロサンゼルスにかけての海岸線には、稀少種に指定されているラッコが棲息している。モンタレーの海岸線を走る17マイルロードに行くと、うまくすれば野性のラッコが海の上をぷかぷか浮かんでいる姿などが見れるそうだ(我が家はまだ遭遇していないが)。

このラッコ、とにかく食いしん坊で、一日に体重の約4分の1相当の食べ物をとるそうだ。主な食料は、ウニ、アワビ、カニなど、なかなか贅沢である。

1977年に捕獲禁止令が発行されラッコの数が増えてくると、今度はロサンゼルス沿岸の漁業組合が漁が成り立たなくなってきているといい始めた。それが1980代の始めころのことだそうだ。

カリフォルニアの北側、とくにモンタレーのあたりは、いつごろからか覚えていないが自然保護地区として漁業は禁止されている。

そこで1987年から、ロサンゼルス近郊のラッコたちを北側に”引越し”させることにした、というのだ。つまり泳いでいるラッコを捕まえて、北に連れて行って放す。言ってみれば拉致したわけだ。

ところが、拉致ラッコは、あるものは泳いで元住んでいたところに戻り、あるものはすぐに死んでしまったりしたことがその後の調査でわかった。つまりこの引越し作戦はうまくいかなかったのだ。

結局、連邦政府は水曜日に、引越し大作戦の中止を宣言し、ラッコはどこでも好きなところを自由に泳いでよい、ということにしたそうだ。

さぞや今頃、ラッコたちは喜んでお腹をポコポコ鳴らしているのであろう。また17マイルロードに行って、ラッコを探してみようかな。

EAが残業手当法廷闘争に妥協案提示2005年10月06日 14:39

本日付 San Jose Mercury News 1C面

ちょうど一年ほど前、Electric Arts(EA)やSony Computer Entertainmentを相手取って支払うべき残業手当が支給されていないという民事裁判が起こされた。

EAについては判決で原告勝訴となっていたようだが、その後控訴していたのか(多分控訴しているのだと思う)、また他の裁判が現在どのようになっているのか、この点は知らない。ただどうも、被告側にはあまり有利には動いていないようだ。

記事では、EAが次のような妥協案を提示した、と述べている。

経験の浅いコンピュータグラフィクス技術者について、原則時間給とする。また一回だけの会社の株の所有権も与える。ただし、対象者にはボーナス支給はなく、ストックオプションも与えられない。

(この「一回だけの会社の株の取得権」とはどういうものなのかはよくわからないです。)

EAとしては裁判が長引くことで雇用、特に優秀な技術者の採用に影響が及ぶこと、また従業員たちの間に労働組合が結成されそうな動きがあることを懸念したようだ。

このうちストックオプションについては給与の方に反映されるのならと、おおむね好意的に見られているようだ。というのも、上場してしまった企業の株価は、近年特に高値安定状態にあって、従業員にもあまり魅力的に感じられていないという背景がある。ストックオプションとはある時点での株価で一定数の株式を一定年数以降に購入する権利を与えるもので、例えば5年後に株価が2倍になっている場合、ストックオプションでは5年前の半値で買える権利を有しているわけなので、売買差益が出る。逆に下がっていたら損になるが。

一方時間給については時間のカウントなど具体的な点が明らかになるまで様子見といった感じのようだ。

しかしこのEAの動きは、ゲームソフトウエア業界に限らず、ハイテク業界全体に影響を及ぼすのではないか、とも見られている。

ちなみにこの「残業手当て」について、記事ではカリフォルニアの労働法がどのように規定しているのかを紹介している。これによると、

「高度な知識や創造的能力により何らかの決定権を有する従業員は残業手当ての支給対象から除外される」

のだそうだ。この文言からすると、これに当てはまらない技術者を探し出すほうが難しそうだが、民事訴訟を起こした技術者の主張は、

「私はイメージを製造する従業員であって、なんらオリジナルあるいは創造的な仕事をしていたわけではない」

ということだそうだ。要するに指示に従って仕事をしているだけだということか。

ちなみにアメリカの技術者の雇用体系はほとんどが年俸制で、何時間仕事をしようがしなかろうが、月々の支給額は一年間一定だ。大体1年ごとに成果評価があって年俸の見直しを受ける。しかし、ゲームソフトウエア業界では、競争の激化のゆえに相当長い時間の労働を強いられていたことが、こうした民事裁判にまで発展したようだ。

ちなみにウチは”年俸”というより”十年俸”のような状態で、影響はまるでありえない(泣。