学校は財源増額まで間近2006年01月04日 22:11

本日付San Jose Mercury News 1A面”Schools on brink of more funding"から

アメリカの小学校には日本の学校にあるような音楽の時間というものがない。

我が子の通う学校では、クリスマスとか一年の終わりなどにちょっとしたコンサートをするため、集中的にコーラスの練習などをする程度だ。それも指導は保護者がボランティアで行い、クラスによってはそういったこともない。もちろん音楽の先生というのもいない。

体育も週に一度PE(Physical Exercise)の時間がある程度で、体育の先生もいない。

学校によっては中高でもそうした専門の教員がおらず、カリキュラムから削られているところもあるようだ。

これは必ずしも教育方針によるものではなく、予算削減の影響によるところが大きいようだ。

シュワルツネッガ知事は火曜日、大雨による洪水被害にあったサッター郡の堤防視察の際に、来年度予算で教育費の増額の考えがあることを明らかにした。

具体的にはK-12の義務教育費(アメリカではKindergartenから高校卒業の12学年までが義務教育になっている)として本年度予算より43億ドル増額の543億ドルをつける計画とのこと。これは生徒あたりにすると約11000ドルの予算ということになる。

増額された分については、20億ドルを新入生やインフレーション分として、17億ドルを音楽や体育の授業などの維持のための借金の返済分として、4億ドルをアフタースクールを推進するために使用することが考えられているようだ。

この予算増額案は、以前のブログ記事でもお伝えしたが、税収の増加による州収入の増収が背景にある。また11月の住民投票で教員組合などからの支持を得られず提案全てが否決されてしまったことも背景にあるようだ。

この増額案に対して、教員組合関係者は今のところ静観状態のようだ。というのもまだこれが暫定的な発表でしかないことが理由の一つだ。より具体的な予算案は1月10日に公表されるそうだ。

実は2004年の住民投票において、「教育費は景気によって増減を変動させるが、削減については削減幅をあるレベルに限定させる」といった主旨の提案98が可決されており、これによれば2004年度は40億ドルの増額をしなければならなかったらしい。しかし州財政難の問題によって提案98の実行は停止され、2004年度は20億ドルの増額をしたが、残り20億ドルについては別途検討ということになっていた。

この点に関連して、教育関係者からは、「借金返済分の17億ドルの割りあては少なすぎで、実際には55億ドルが割り当てられるべきものだ」との声も出ている。

私としては、額はともかく、教育費を増額することには賛成だ。ここ数年は教育費の削減や学校の閉鎖など、将来に不安を感じる話題ばかりであった。また学校予算の削減分については保護者からの寄付でまかなわれるなどされており、隠れた「増税」のようになっていた。教育は国の根幹であり、未来への人材育成という投資と考え、やはりおろそかにはすべきでないと考える。

ところで増額された場合の543億ドル、生徒あたり11000ドルという予算だが、記事では全米各州の生徒あたりの予算で比較して、なお全50州の25番目以下の予算規模だと紹介している。

1年ほど前(たしか)のSan Jose Mercury Newsの記事で各州の教育環境の比較が紹介されていたことがあり、それによるとカリフォルニアの生徒あたりの教育費はほとんど最下位、教室あたりの生徒数もほとんど最下位、学力レベルもほとんど最下位と、教育環境は決してよくないことが指摘されていた。

これは単純に教育予算だけの問題ではないだろうが、憂慮すべき事態であることは明らかだ。これについてはまた、機会をもって改めて議論することとしたい。

蛇足:日本語訳のタイトルがおかしな具合になっている"Schools on brink of more funding"だが、このbrinkという単語、「間際、瀬戸際」という意味の他に「水際」という意味もある。恐らくシュワルツネッガー知事が堤防の上の会見で明らかにしたことと引っ掛けているものと思う。いや本当に蛇足です。