米国居住者の国民年金加入について ― 2006年08月28日 23:39
2005年末に日本とアメリカが社会保障協定を結び、発効されたことにともなって、アメリカ居住者が国民年金に加入しつづけるのは無駄なことといううわさがまことしやかに飛び回っている。
つまり、協定以前は国民年金とアメリカの老齢年金の両方からの支給を得られたけれど、協定以降アメリカ居住者は国民年金からの支給を得ることができなくなったというのだ。
我が家はどこぞの年金未納議員と違ってまじめであるから(古い話だ)きちんと年金を納めているのであるが、もしこの話が本当なら大変なことである。そこでちょっと調べてみることにした。すると、この話は全くデマであることがわかった。
実際はどのようになっているのかを説明する前に、アメリカの社会保障制度についておさらいをしておこう(といっても私もネットでざざっと調べた程度の知識なんだけど)。
アメリカの公的年金制度は税金の一部として徴収され、10年間納付すれば受給資格が得られる。支給開始年齢は1960年以前の生まれでは65歳、以降では67歳だそうだ。
このように税金の一部であるので、アメリカに居住しアメリカで収入を得ているものは必ず徴収されて来ていた。
例えば日本からの赴任者については、日本で厚生年金を積み立て、一方でアメリカの社会保障費も徴収されるという二重払いになっていたわけだ。
あるいは、海外赴任の場合厚生年金や国民年金は一時的に停止状態にするのが原則なのだそうだが、そうすると場合によっては日本の年金受給資格である加入期間25年というのに満たなくなってしまう可能性があった。
そこで日米社会保障協定なんだけど、何をお互い認め合ったかというと、
1)日本企業に勤めるものがアメリカへの赴任、出向期間が5年未満と考えられる場合、申請によってアメリカの社会保障費の支払いが免除され、日本の国民年金への継続加入が認められるようになった。 2)アメリカに赴任、出向期間中国民年金や厚生年金が一時停止状態になっており、アメリカの社会保障費を支払っていた場合、その期間を日本の年金加入期間として加算することができるようになった。
しかも、アメリカの社会保障費を例えば5年しか払っていなかったとしても、日本で5年以上の年金積み立てをしていることを申請すれば、どうもアメリカの年金も受給できるらしい。つまりは上記2の逆パターンだ。
まあともあれ、協定の内容をぶっちゃけて言えば、アメリカに来れば必ず支払わなければならなかった社会保障費が一方で支払い損になっていたものを是正したものだということだ。
でもそうすると、アメリカに長くいるのなら日本の年金なんかさっさと止めて、アメリカの社会保障費を払っておけば、アメリカの年金も受け取れるし日本の年金の受給資格も得られるのではないか?ということになる。
確かにそうなのだけれどここで問題になるのは「幾ら受け取れるか?」で、日本の場合確かにアメリカの分も通算されて積み立て期間として計算することはできても、受給額は実際に積み立てた額で決まるので、アメリカにだけ払っていた期間というのは実際には空白期間になってしまう。
もっとも年金制度についてはまあいろいろと議論があるようだし、支給額とかその計算方法なんかもこの先十年同じである保証はないのだけれど、とにかく現時点ではそうなっているわけだ。
ところでアメリカの公的年金の支給額は積み立て額に関係なく一定という話を聞いているのだが、そうすると5年はらって後の5年は日本の年金に加入していた場合でも、申請すれば普通のアメリカ人と同じ額だけ支給されるのであろうか?それはちょっとわからないので知っている人がいたら是非教えて欲しい。
ちなみに国民年金については、日本国籍を持つものは海外居住者であっても任意加入することができるし、海外にいながら年金を受けることができるようだ。
ということで、まとめると
1)アメリカ居住者が国民年金に加入し続けても、日米協定後それが無駄払いになり年金が支給されないなどということはない 2)アメリカにいる間国民年金の積み立てをしていなかったとしても、協定後は通算年数として換算されることで受給資格を満たす場合がある。ただし支給額については要注意。
ちなみにここで書いたことは日米の関係であって、日本は他の国とも社会保障協定を結んではいるけれど、その内容はそれぞれの国ごとに異なるので要注意だ(例えばイギリスの場合、年金加入期間として通算されない)。
by takablo [社会] [コメント(0)|トラックバック(0)]
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