サンベニート郡のスキャンダル記事-つづき2006年11月20日 19:23

ホリスター市とその周辺の宅地開発をめぐる、開発推進派と反対派の血で血を洗う攻防の続き。

選挙では反対派をやぶり当選したデラ クルーズ氏であったが、ここで不在者投票を不正に操作した疑惑が巻き起こってきた。デラ クルーズ氏の関係者が用紙を集め、デラ クルーズ氏の票として投票したというのだ。不在者投票用紙は本人と親族以外が扱うことは法律で禁じられている。

郡検事のサースフィールド氏はこれを調査し始めたところ、秘密結社ロス バリエンテス(LV)の弁護士ペキン氏が、これを事件にしないようにと申し立ててきた。これ以上調査を継続するのであれば、サースフィールド氏が事務所の女性と不倫関係にあることを公表すると、半ば脅しのようなことを言って来たのだった。サースフィールド氏はこの脅しを無視し調査を継続すると、氏の情事がフリーランス紙の記事になり公になってしまった。これがもとで氏は離婚に追い込まれることになる。

LVの名前はこれまでにもたびたび表に出ていたが、その実態はなぞのままであった。誰がLVのメンバーなのか、裏で手を引いているのは誰なのか、そしてLVの目的は何なのか。

サースフィールド氏は、LVは単なる団体ではない、民主主義を脅かす政治的敵対組織であると感じ始めるようになった。自分の意に沿わないものは抹殺を図る、巷の犯罪組織よりたちが悪い。

しかし自身は醜聞がもとでリコール騒ぎまで起き、身動きが取れない状態に陥ってしまった。そんな時驚くべき事件が起こった。

サースフィールド氏の飼い犬が2匹、毒殺されたのだ。

LVが首謀者だといううわさが流れ、町の人たちが互いを指差し、「お前はLVの一味か、犬殺しか」と言い合うしまつ。

しかしこのことが却って、サースフィールド氏のリコール騒ぎを鎮火し、息を吹き返す結果となる。

氏はペキン氏、LVそしてデラ クルーズ氏の不正あるいは不法行為について立件、提訴する準備を進めた。

しかしそれらはことごとく抗告棄却されたり、証拠不十分で告訴を断念せざるをえないことになってしまった。先のデラ クルーズ氏の不在者投票不正疑惑についても、候補者が投票用紙を集め選管に持ち込むことはサンベニート郡では当たり前のようにやられていたことで、選管もそれを受け付けてしまっているため不正の立件は難しいという判断に至っている。

サースフィールド氏はLVの実態を解明する調査を始めることにした。LVが雇っていた探偵やLVに関与していると見られるものの身辺調査からLVのメンバーと思しき人たちのリストを作成し始めた。

しかし状況はサースフィールド氏に不利になってくる。サースフィールド氏が郡の予算を無駄遣いして「私怨を晴らすための調査ばかりしている」と抗議活動が起こり、ピケがオフィスの前に張られるようになってしまった。

そして2006年6月、郡検事職の改選予備選が行われ、サースフィールド氏はこの時点で落選してしまう。

一方この選挙ではピナクル紙の社主であったコーン氏も郡監査官に立候補している。コーン氏は社と自身への誹謗中傷に耐えられず新聞社を売り払ってしまったのだが、それは敵を前に逃げたも同然と自身の行動を恥じていたという。しかし選挙では善戦むなしく落選となってしまう。

アメリカの選挙では選挙カーで名前を連呼するなどということはしない。自身の協力者の庭先などに自分の名前が書かれたバナーを立ててもらうなどするのだが、サースフィールド氏とコーン氏のバナーは落書きがされるなど嫌がらせがあったようだ。

結局のところサースフィールド氏は去り、コーン氏も去った。反対派は一敗地に塗れる結果となった。

2006年11月、4400戸の宅地開発を許可するという条例Gは住民投票の結果棄却された。しかし、一方で6800戸の宅地開発が計画されているという。

ホリスター市とサンベニート郡はいったいどこへ行くのか。

以上がSan Jose Mercury Newsの二日に渡る特集記事の概要だ。記事には多くの人の名前が出てきており、ここには書いていない様々な事件についても触れられているが、ここでは簡潔にまとめるためそうした事柄を省略している。そのため記述が不正確あるいは不十分になってしまっている部分もあるかと考える。その点は元記事に当たっていただくことで補完していただきたい。

サンベニート郡のスキャンダル記事2006年11月20日 12:33

日曜と今日の2回にわたって、San Jose Mercury Newsが特別記事を掲載しているのだが、一面ぶち抜き、紙面を2ページ強丸まるつかった力の入ったレポートだ。しかし書かれていることはまるで小説か映画の物語のようにどろどろしたもの。今ならオンライン版でも読むことができます。

実に込み合った話なのだがこれをかいつまんで言えば、サンベニート郡の開発の急進派と開発反対派の争いの中で、反対派には様々な中傷や妨害行為が加えられ、一方急進派には秘密結社まで現れ、今は反対派には一縷の望みだけ残されているものの郡の開発は進められていっている、といった物語。

物語の舞台の中心はホリスターという市。サンノゼから南に約30マイルほどの、まだ昔ながらの建物などが残る町なのだそうだ。夏にバイク乗りが勝手にやってきて盛大なお祭りをすることで有名で、この祭りはマーロン ブランドの映画「ワイルドワン」の元ネタにもなっているそうだ。人口は市のWebサイトによると、2005年の統計では37000ほどだが、カリフォルニアで最も成長を遂げている町のひとつにあげられているらしい。ちなみに日本の兵庫県滝野町と姉妹都市提携をしているそうだが、滝野町は合併して加東市になってしまっているので、現在このステータスについては定かではない。

ホリスターが特に発展したのが90年末、シリコンバレーがバブル景気で地価が高騰しつづけた時期と重なる。しかし人の流入に相反し道路、上下水道などのインフラが伴わず、生活環境の悪化が社会問題化してきたようだ。

そこで、急速な開発に規制をかけ、まずインフラを整備してから徐々に開発を進めようとする開発反対派と、開発を推進したい地主や不動産業ら急進派の対立が始まることになる。

まず声を上げたのがコーンさん。サンノゼで生まれ育ち、サンノゼマーキュリーに勤めていたが、ホリスターのコミュニティー新聞社ピナクルを買い、社主兼編集長として活動をしていた。コーンさんは市の将来を憂慮して、2000年の677戸の住宅開発に反対意見を掲載したところ、スパムメールが送られてくるようになったそうだ。スパムメールのリンクをクリックするとコーンさんらの名前が書かれているWebサイトにとび、名前をクリックするといかがわしいアダルト写真が出てくるという、全く子供のいたずらのようなもの。このスパムメールの犯人が後でわかったそうだが、なんと市の市議会議員だったというのだからあいた口がふさがらない。

しかし、こんなのはお話の序章だった。

2003年には、サンベニート郡に一定の開発規制をかけるため、開発許可地域の線引きをする政令Gが提案され、住民投票を前に郡監督官で承認された。

ちょうどそのころ開発推進派の間で「ロス バリエンテス」という秘密結社が結成されたのだそうだ(以降LVと書く)。名前は「勇者たち」という意味なのだそうだ。

秘密結社LVは政令Gを廃案にするため、反対派を貶める行動に出始めた。まずターゲットにあがったのがスキャグロッティ氏。4期にわたり議会議長も務めてきた実力者だ。また政令G賛成派でもあった。

LVはスキャグロッティ氏が政令Gの開発許可地域の線引きが自身の所有する土地に有利になるように行ったと訴えだした。また下水管の発注に関して献金疑惑があると言い出した。LVは私立探偵を雇い、これらを調査させ、報告書を郡検事のサースフィールド氏に提出し、刑事告発するように訴えたのだ。

サースフィールド氏はこれらの事情にはよく通じていたのでこの訴えは事実無根として却下したのだが、話は「フリーランス」というコミュニティ紙に取り上げられ、うわさがうわさを呼んでスキャグロッティ氏の立場を危うくするまでに及んだ。

更に、「スキャグロッティ氏がピナクル紙に25000ドルを献金し開発反対の記事を書かせている」といううわさまで飛び出し、火の粉はピナクル紙とコーンさんにまで及んだ。コーンさんはついに新聞社経営を断念し、ピナクル紙をフリーランス紙の親会社に売ってしまった。

スキャグロッティ氏も次の郡監督庁の選挙の立候補を断念し、同じ反対派の監督官ケスラー氏とボブ クルーズ氏の応援に回ることにした。

しかしながら選挙では、ケスラー氏は推進派のボテルホ氏に敗れ、ボブ クルーズ氏もデラ クルーズ氏に敗れた。政令Gも住民投票の結果廃案になってしまった。

2004年3月のことであった。

後半に続く

投資家たちは経済成長のために国境の開放を期待2006年11月15日 15:26

さて、クイズです。

Googleの創業者の一人、セルゲイ ブリン

Yahooの創業者の一人、ジェリー ヤン

YouTubeの創業者の一人、スティーブ チェン

eBayの創業者の一人、ピエール オミダイヤ

かれらに共通するものはなんでしょうか?

こたえ

みなアメリカ国外で生まれた移民なのだ。

本日付San Jose Mercury News 1C面の記事によると、不法移民を厳しく取り締まろうとする共和党政権に対し、先週民主党が大勝したことで、投資業界では移民をより受け入れる方向に転換できないかと考えているそうだ。

投資業界は、移民の入国を厳しくした場合ハイテク業界の発展を妨げ、ひいては経済に悪影響を及ぼすと警告している。

全国投資家組合が今日公開したデータによると、投資家が援助しているベンチャーのうち実に47%が創業者に移民を含んでいるのだそうだ。また過去15年の間に移民が創業し上場した会社は、上場企業の25%にも上るのだそうだ。

データはトムソン財務データベースの1970以降のデータを使い、現在なお活動を続けている会社を抽出し、創業者の出生地を調べたのだそうだ。

発表されたデータによれば、移民が設立した会社が最も多く分布するのは圧倒的にカリフォルニア州で、全体の60%を超えている。次が14%のマサチューセッツ州、そしてニュージャージ州が6%と続く。

また出生地別でみると、やはりというかインドが32%と最も多く、2位はちょっと意外なのだが17%でイスラエル。3位が台湾の16%となっている。日本は載っていない。

それにしても、アメリカの産業や経済がいかに移民に頼っているか、それが明らかにされたデータだといえる。もっとも、ベンチャー企業の創業者に限らず、ベンチャーで働いてみるとまわりじゅう移民ばかりなわけで、そうしたことはベンチャーの中にいると肌で感じる。

ベンチャーとしては優秀な人材を集めることが会社の生き残りにつながることであるし、また給料が安く待遇が多少悪くてもできるだけ長く会社に貢献してくれる人材を求めており、それがビザをサポートして海外から呼び入れてでもという意識になっているようだ。

しかし一方で、それがアメリカ人の就労機会を奪っているとしてブッシュ共和党政権下で移民の受け入れが厳しくなっている。例えばH1Bビザの発行数は、もともと年間発行数に制限があるものなのだけれど、それをできるだけ低く抑えようとする動きがあった。記事によると、2001年から2003年の間は年に約195000のH1-Bビザが発行されたが、2004年には65000に抑えられたのだそうだ。

そこで先の投資家組合の働きかけで、「修士以上の資格を持つ高等教育を受けたものはビザの発行数の制約対象からはずす」「H1-Bビザの発行総数を増やす」という法律が提案され下院法務委員会で諮問されようとしているそうだ。

私個人は既にビザとは関係ない世界にいるけれど、移民として入国してビザの取得での苦労を経験してきた立場で考えると、こうした法案には賛成だ。アメリカの産業や経済、技術の発展という点から考えても、この法案は重要だと思う。

しかし一方、中間選挙中にブキャナン氏がテレビのインタビューで言っていた事も考えておかなければならないだろうと思う。彼の対象はメキシコからの大量の不法移民であって、H1-B対象者とは若干異なるけれど、「あるひとつの国からの大量の移民流入は、もはや侵略だ」と強い調子で述べている。こういう思いを抱いているアメリカ人は、恐らくブキャナン氏だけではないだろう。