VHS対ベータ 再び2006年01月09日 22:10

本日付San Jose Mercury News 3E面、"VHS VS. BETA REDUX"から

Las Vegasでは1月5日から8日までの4日間コンシューマエレクトロニクスショーが開催されていたが、展示における注目の一つが次世代DVDだった。

これはもう良く知られている通り、次世代DVDの規格が東芝、NECなどのHD-DVD陣営とソニー、パイオニアなどのBlue-ray陣営との真っ二つに分かれているのだ。

将に「VHSとベータの戦い再び」状態である。

次世代DVDになると何がよくなるのか?

現在のDVDには約2時間の映画が一本分、ビデオテープより高音質高画質で録画できるわけだけれど、高精細TV(HDTV)対応には最低でも更に4倍の記憶容量が必要になる。そこで”青色レーザ”を使ってより細かい情報の読み書きができるようにしたもの、それが「次世代DVD」だ。より細かい情報の読み書きができるため、同じサイズのディスクにより多くの情報を書き込むことができる。

しかし、「より細かい情報の読み書き」の実現方法は一通りではない。

例えば現行のDVDの方式を拡張するやり方もあろう。これがHD-DVDの方式だ。

あるいは「青色レーザ」の技術を使ったより最適化を図った方法も考えられる。これがBlue-rayの方式だ。

より具体的に言えば、HD-DVDは従来のDVDとの下位互換性が高く、HD-DVDプレーヤでDVDディスクを再生する装置は容易にできる。一方でディスクの情報量はBlue-rayより若干小さい。

一方のBlue-rayはDVDとの下位互換性が全く無いので、Blue-rayプレーヤでDVDディスクは再生できない。

お互い一長一短があるが、消費者の関心はどっちのフォーマットでどんな映画タイトルを見ることができるのか、だろう。

記事によると21世紀フォックスとライオンズゲートインターナショナルは本年末にBlue-rayのタイトルを何本か発売開始すると発表しているそうだ。一方、いくつかの映画配給会社が本年中に発売するタイトルは両方のフォーマットそれぞれに出すということだ。

もっともこのようなタイトルが発売されてもプレーヤがないと話にならない。

東芝はHD-DVDプレーヤ2機種を本年3月に市場に出荷することを発表したらしい。これによると販売予定価格は1機種が799.99ドル、もう1機種が499.99ドルだそうだ。

うーん、これは高嶺の花だ。

プレーヤがあってもHDTV対応のテレビがないとやはり意味がないだろう。こっちは、うーん、やはり我が家にとっては高嶺の花。

しかしパイオニアの上席副社長 ルス ジョンストン氏によると「我々はいまやHDの世界に住んでいる。一度HDを経験してしまうともう低品質のものには戻れない」などと述べており、そのうちどうしても欲しくなって買ってしまうのだろうか。

でも、我が家にHD対応DVDが来るのは、「次世代」の修飾語がとれて上の戦争にも決着がついたころだろうな、たぶん。

ところでDVDは、その誕生時から2つの規格の覇権争い状態であった。「次世代DVD」の混乱の種は既にあったわけだが、多くのユーザがそれに気が付かなかったのは記録再生装置の多くが両規格に対応していたからだ。

しかし一度DVDを自分で作ってみよう、あるいはDVDにデータをバックアップしておこうとディスクを買いに行くと、DVD-RとDVD+R、あるいはDVD-RWとDVD+RWという2種類のメディアが売られているのに気が付く。もう少し良く見ると、DVD-RやDVD-RWには映画のディスクでもおなじみのDVDのロゴが描かれているけれど、DVD+RやDVD+RWにはないことがわかる。

Rしか書かれていないのは1回だけ書き込み可能、RWと書かれているのは複数回の書き込みが可能なものといのはマイナスだろうがプラスだろうが同じだが、マイナスとプラスでは規格が違うため、マイナスにしか対応していないDVD書き込みドライブでプラスのメディアは使えないし、その逆もそうだ。

自分のDVDドライブがどちらに対応しているのか、メディアを購入するまえによく注意する必要がある。

ウチの会社でも、会社にあるドライブが古いものでマイナスにしか対応していないのに、安かったからとプラスのメディアをしこたま購入しちゃった人がいて、しかたがないから私が家で使用してさしあげたことがある。

また、マイナスの規格は映画のDVDディスクの規格を決めているDVDフォーラムが作ったものなので、おなじみのDVDのロゴが載せられているが、プラスの規格は別陣営なのでそのロゴがないのだ。DVDフォーラムが検討している次世代DVDはHD-DVDのほうだ。

ビデオをDVDに焼いて自製DVDを作った場合、ほとんどのDVDプレーヤがマイナスでもプラスでも再生できるらしいが、規格上はプラスのものの方が互換性が高く再生上の問題は小さいらしい。ちょっと奇妙な話だが。

このようにDVDは元から複数規格が存在する状態なのだが、たとえ複数の方式があっても、それらが互いに技術競争、価格競争をして、ユーザによいものが安く手に入るようになっていればむしろ歓迎すべきことだろう。

確かにデバイスやディスクは随分と安くなったとは思うが、それは複数方式が存在することによるものではなく、むしろ方式が一つならもっと安くなっていたのではないか、というのが正直な実感だ。