レーダシステムで太平洋のパルスを収集2006年01月08日 23:14

本日付San Jose Mercury News 1A面、"Rader system taking pulse of the Pacific"から

メキシコからオレゴン州まで1700Kmもの海岸線に渡る大プロジェクトが進行しているようだ。

沿岸にレーダーシステムを設置し、海流をモニターしようというのだ。

モニターの仕方は気象観測における雲の動きの調査と同じだ。気象観測ではレーダから放射された電波の反射を受信して大気の流れる方向とスピードを調べる。

海流調査では電波を向ける先が海の表面になる。

約4mの高さのレーダが20マイル(約32Km)ごとに57箇所に設置され、TVの送信波で使用しているのと同じような周波数帯の電波を常時海に向けて放射し、海流をモニターするのだそうだ。その結果は即座にコンピュータに集計され、インターネットでも見ることができる。

既にサンディエゴやサンフランシスコの沿岸、あるいは大西洋のメイン州の沿岸などでも同じようなシステムが稼動しており、その結果は次のサイトで参照できる。

http://www.oceancurrents.us/

実際見てみると、メイン州の結果で表示される時刻情報はほとんど現在時刻であることがわかる(現地時間表示なので、時差に注意!)

このシステム、構築に2100万ドルを費やし、2009年までに完成の予定なのだそうだ。構築費用は複数の研究機関で分担するそうだ。

海流が分かると何がうれしいのか?

例えば海流に乗って成長していく魚たちの幼魚が、実際どのように分布していくのか、といったことがわかるそうだ。カリフォルニアの沿岸はラッコの記事でもお伝えしたようにいろいろな場所が漁業禁止区域に指定されているが、幼魚の分布が詳しくわかれば、より効果的な保護地区の指定をすることができると考えられている。

あるいは船などが難破し油が漏れ出した場合に、それがどのように分散していくかを事前に予測することができる。

あるいは遭難して海流に流されてしまった人が、どこに流されてしまうかを予測することもできる。

いろいろな応用が期待できるようだが、それより何より海洋学者の意識として、人の海の物理現象の知識は、陸地に比べて10年遅れている、と考えられているそうだ。

そこでこのプロジェクトには大きな期待が寄せられているようだが、解決しなければいけない問題もいろいろあるようだ。

まず構築できたとして、その後の運用には年に200万ドルもかかるそうだ。

また構築を進めるについても、実はいくつかのアンテナ設置予定地について、周辺住民の理解を得られていない場所もあるそうだ。

もちろん、予算どおりにできるかどうかという問題もある。

それらの問題はあるにしても、研究者たちはこれを更に拡張したものも考えているようだ。例えばこのシステムで海の表面の海流をモニターし、また船の底や潜水艇につけたモニターで海の中の流れを調べてそれを立体的に表示させる。

”君の手元のパソコンで海の表面の動きが見れて、そのまま飛び込んで海の中の様子も見ることができる。面白いと思わないかい”みたいなことを言ってるけれど、どうかな?

まあとにかく、こんな風に、研究者たちだけのものにしないで、一般の人にも関心が向くような表示とか情報提供ができれば、例えばそれに広告などをつけてビジネスになるかもね。いや結構面白いものができそうな気もするんだけど。

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